Text by 坂本陸(@RIKU266)
Edited by 日原多瑛子(@tae_yosari)
「たくさんの人に演舞を見て欲しい!」
——よさこいを踊ったことがある人やそこに関わったことがある人なら、誰もが一度は思ったことがあるはず。もちろんよさこいに限らず、自分が時間と労力をかけて作り上げたものや作品を「一人でも多くの人に」と思うのは、あなたがそこに懸けている想いの強さを象徴しているのだと思います。
この「yosari」も、よさこいに懸ける想いの強さは生半可なものではないと誇りと希望を持って運営しています。
ただ、それでもなかなか「広報=広く報せる」というのは簡単ではないと、ソーシャルメディアが発展して多くの人が集客について考えを巡らせることが多くなったこの時代だからこそ、ひしひしと感じる。
特にそれが「よさこい」を1つのテーマとして捉えるのであれば、「お祭りに出れば人に見てもらえる」という前提がある以上、インターネットを活用した集客や広報をおろそかにしてしまいがちでもある。
「なんだかよくわからないから…」「ホームページを作るのが難しそうだから…」自分も職業柄Webに関わることが多い以上そういう声に触れること自体もとても多いですが、よさこい業界という視点で見ると特にインターネットに関する苦手意識の根強さを改めて感じています。
そんな中、ここ数年単位でしょうか。よさこいの新チーム立ち上げが非常に多くなってきたということもある中で、インターネット上での情報発信や広報活動に力を入れるチームも徐々に増えてきた気がしています。
今回は、そんなソーシャルメディアの台頭とよさこい業界の発展というテーマで話すのであれば欠かすことのできない存在、「かんしゃら」さんにお話を伺いました。
2012年に立ち上げられた「かんしゃら」は、大阪と東京の2拠点で活動するよさこいチーム。
「美しく格好良い鳴子踊り」をメインコンセプトに据え、 「鳴子の揃う音」「乱れぬ隊列」を美しさとし、「踊り子一人ひとりの表現力」、「統率した動き」を格好良さとしています。
実際に自分も高知のよさこい祭り、神戸よさこい、東京よさこいなど幅広い地域のお祭りでかんしゃらを見ることが多いのですが、他にはない独自の世界観はあっという間に見ている人を惹きつけ、魅了しています。「格好良い」と思う。本当に。
そんなかんしゃらは、なんと1万人を超えるTwitterでのフォロワーを抱えており(2018年12月現在)、Twitterをやっているよさこい人であればその存在を知らない人はいないのではないでしょうか。
Twitter以外にもYouTubeでの映像作品制作や発信、フォトコンなどソーシャルイベントの開催など、本当に幅広く色濃く「広報」に力を入れているチームです。
今回はそんな「かんしゃら」を代表として牽引する、みなと(@mina_koi)さんに、チーム広報にこだわる理由やそのきっかけとなる出来事、そしてソーシャルイベントにかける想いなど…普段は聞くことのできないお話をお聞きしました。
「よさこい」と「広報」、次世代によさこいを継いでいくという意味でも決して避けて通ることのできないこのテーマについて、あなたやあなたのチームが一人でも多くの人に想いを届けることができるよう何か新しい気づきやきっかけが生まれれば幸いです。
なぜチーム広報に力を入れるようになったのか?
——まず一番気になるところとして、なぜかんしゃらはチームとして「広報」に力を入れるようになったのでしょうか?
みなと:最初に所属していた社会人チームで活動していた時に先輩に言われたのが「いい演舞をしていたら人は集まる」。
でも、自分の中で「ほんとかな?」とずっと思っていました。
まだ出来たばかりのチームだったこともあり、若手の私にたくさんチャンスをくれました。そこで「広報」に力を入れたい!と志願して、WebsiteやSNSの運営をやらせてもらいました。
ちなみにWebsiteといっても形もなかったんで、一から全部作りました。おかげでHTMLとかCSSの勉強ができたんでよかったですね。
そうして試行錯誤をしているうちに、メンバー応募の問い合わせが増えて、チーム参加人数が過去一番になったんです。そこで広報の効果を初めて実感しました。
その後、かんしゃらを立ち上げたときも組織形態、演舞、会計と同ランクで広報に重きを置いて準備していました。
その時から「演舞を見てもらうための広報」を意識していたと思います。
「チームを知ってもらうことに全振りした広報」と「チームの演舞の雰囲気を認識してもらう広報」。この組み合わせが自分なりの「演舞を見てもらうための広報」だと思っています。
——「演舞を見てもらうための広報」を意識するにあたり、何かきっかけとなるような出来事があったのでしょうか?
みなと:具体的にはないのですが、これから踊る!っていうのにお客さんがステージから去っていく風景を目の当たりにしたことがある人は多いと思います。
これってかなり踊り子として寂しいんですよね。
じゃあ、なんで離れるんだろう?
「前のチームさんのファンだった」とか「他に魅力的なチームさんが別の会場で踊る」とか…いろいろ考えられるのですが、ひとつに「今から踊るチームのことをよく知らない」っていうのがあると思ったんです。
特にかんしゃらのデビューは2013年の京都さくらよさこいだったのですが、京都さくらよさこいって他のチームさんの初披露だったり、地元京都の学生チームさんがたくさん出ていたりと強豪揃いでして…。
高知に参加するためにメンバーを集めたいと考えていた自分たちにとって、ステージにお客さんや他のチームの踊り子さんを呼ぶことは最重要事項でした。
デビューの演舞は雨の梅小路公園という決して良いとは言えないコンディションでしたが、広報の甲斐もあって、お客さんがわざわざレインコートを着て集まってくれたことは今でも覚えています。
また、この少し前に「颯戯|FU-JA」さんのTwitterの中の人と親交を持つようになり、すでに有名なチームだった颯戯さんに全力で後押しをしていただきました。
広報もその方にいろいろと教えていただき、その後コラボ企画もやらせてもらって、今のかんしゃらの広報の基礎があると思っています。
ほんと、よさこいは人の繋がりが大切だと思います。
かんしゃらなりの各メディア媒体の使い分け方。
——ありがとうございます!次に各メディアの使い分け方についてお伺いしたいのですが、まずHPはどのようなイメージで運営されているのでしょうか?
みなと:HPの位置付けは「チームの演舞の雰囲気を認識してもらう広報」にあたりますね。
かんしゃらの演舞の雰囲気に沿って「シンプルに」「美しさ」を意識してデザインしています。サイトとしてはCMSで製作し、SEO対策も施してます。
またレスポンシブ対応もできているので、結構よさこい界では手が混んだサイトだと思っています。意外とWebsiteを見てお問い合わせって多いので、できる限りの情報は掲載しているつもりですね。
あとは更新頻度が大切だと思っているので、日常でネタを探して定期的にブログを書くように心がけて運営しています。
——では、Twitterはどのようなイメージで運営されていますか?
みなと:逆に「チームを知ってもらうことに全振りした広報」をしているのはTwitterですね。いつもTLを荒らして申し訳なく思っています(笑)。
かんしゃらって敷居が高いチーム、と思われていることが多いみたいなので、なるべくフレンドリーさを心がけています。
皆さんもご存知かと思いますが、全然よさこいだけに拘っていません(笑)。
平成最後のメリクリ終了まで1時間をお知らせします。
— かんしゃら (@kanshara_voice) December 25, 2018
鳴子を怒るな
#回文の日カメラを止めるなみたいになった。
— かんしゃら (@kanshara_voice) December 21, 2018
また、「高知」や「祭り」のキーワードが関連するものはもちろんですが、Twitterで流行っているトレンドのオマージュも食いつくようにしています。
『もしもし私メリーさん。今万々競演場にいるの。』
「え?」
『もしもし私メリーさん。今あなたの隊列の後ろにいるの』
「え?!こわい!」
『もしもし私メリーさん。あなた左に逃げたでしょ、今あなたの右にいるの』
「バス通るからさっさとお前も左に寄れ」#メリーさんがさらに怖い話を学んでくる— かんしゃら (@kanshara_voice) 2018年12月20日
きっかけはなんでもいいんで「とにかく知ってもらう、認識してもらう」を意識する運用をしています。
あと、結構中の人の趣味が出てしまっているのも愛嬌かと思ってやっています。
別に意識はしていないんですが、某有名企業アカウントさんもかんしゃらと同時期に遊び始めたので、その時流に乗れたのもラッキーだったと思います。
今は他のチームの公式アカウントさんや、カメラマンさんとの絡みも多くなってきて楽しい限りです。
しかしそろそろ新しいこともしたいなーとも考え始めているので、今後も注目してもらえれば嬉しいですね。
かんしゃら|第65回よさこい祭り総集編
高知で踊った2日間、
祭りの雰囲気、踊り子やスタッフの表情、そして演舞、
私たちが大切にしてるものが散りばめられた総集編となりました動画を撮影・編集してくれた撮影班に感謝致しますhttps://t.co/wYHUrJAz8J#よさこい祭り#総集編#かんしゃら撮影班 pic.twitter.com/SbeA8XEETa
— かんしゃら (@kanshara_voice) August 22, 2018
——ありがとうございます、Facebookはいかがでしょうか?
みなと:FacebookってWebsiteとSNS両方の側面を持っていると思っていて、うまくその面を使いたいと考えています。
意識していることはWebsiteと同じですが、SNSの側面を使って公式Websiteじゃやりにくいことをやっています。
今一番力を入れているのは「海外の方へのアプローチ」です。
かんしゃらの演舞ってクールジャパン!ってことで海外の方にウケるんじゃないか?と思っていて(笑)。
公式動画も充実しているので、その紹介を海外向けにするようなイメージの運用を今年から始めました。
チームに今ALTをされている方がいるので、協力してもらって翻訳した文章も同時に載せています。
——次に、YouTubeについての運営テクニックもお教えください。
みなと:かんしゃらの公式動画をご覧になってくださった方はわかっていただけると思うのですが、定点ではなく多角的に撮影し、編集したものを公開しています。
私もそうなんですがよさこいの動画って実は広角で定点撮影が踊り子としては一番見たい動画だと思うんですけど、それとはまったく別に、かんしゃらの公式動画は「よさこいを題材にした映像作品」として制作しています。
「演舞の世界観を増すように」
「見ている方が祭りに参加しているように感じさせる」
「普段見れない角度からの映像で踊り子を楽しませる」
こういったことを意識して製作しています。
見ている方がそういったことを感じとっていただけていれば嬉しいです。
あと、それとは別に「かんしゃらどうでしょう」という企画も始めました(笑)。
YouTuber的なポジションで始めましたが、私とカメラマンは楽しんでやっています。巻き込まれているメンバーは知りません(笑)。
元々はかんしゃら高知DVDのB面として始めたものなんですが、好評だったので調子に乗って外向けにも公開しています。
温かい目で見てもらえればと思いますね(笑)。
でも、出演したメンバーが他のチームさんに「見ましたよ!」と声をかけられたりしているので、意外と宣伝効果があるんじゃないかと思っています。
——最後に、公式LINEの位置付けや運営する上での意識はいかがでしょうか?
みなと:今のコミュニケーションの主軸って皆さんLINEですよね。
もともとは公式サイトから専用のお問い合わせフォームしか用意してなかったんですが、最終的には入会者さんとはLINEでやりとりしているんで、「それなら最初からLINEでいいじゃん」って感じですね。
最近はPCのメールアドレスも持っていない方もいらっしゃるので、気軽にコミュニケーションができる場になればと思っています。
あとは公式LINEに限らずですが、LINE PayやLINE botなどもチームに導入してどんどん便利にしていきたいと計画しています。
発信源を絞らず、他チームやフォロワーを「巻き込んでいく」かんしゃらの広報。
——それぞれ詳細にお教えいただきありがとうございます!
では、かんしゃらがここまでファンやフォロワーを増やすことができたのは、具体的にどういった理由やきっかけがあったのでしょうか?
みなと:根本にはメンバーの努力の積み重ねとインストラクター陣の丁寧で的確な指導、そして作品製作にお力添えくださってる方々のおかげです。
演舞が基本で、それがちゃんと「かんしゃらのよさこい」として披露できているからこそ、ファンが付いて、そしてフォロワーさんが増えていると思います。
「いい演舞をしていたら人は集まる」という言葉は本当だと今は思っています。広報は効率的に進めるアイテムのようなものだと思います。
あえて広報がファンを増やしたことを挙げるとすると、演舞だけではできない、他のチームさんとの交流やフォロワーさんとのコミュニケーションでしょうか。
1チームだけの広報よりも他のチームさんとコラボした方が両方のフォロワーさんが見てくれているので、新規にファンを獲得することができました。
またフォロワーさんとのコミュニケーションがきっかけで同じチームの方にかんしゃらを宣伝していただいたり、または祭りの写真を撮って紹介してくださったりとかんしゃら以外でかんしゃらを宣伝してくれる方が増えました。
発信源がひとつじゃないというのは広報的には非常にありがたいことです。
——何かフォロワーが増えたり認知度が高まるきっかけとなる出来事はあったのでしょうか?
みなと:やはり一番は「よさこい紅白」というイベントを颯戯さんとやったことでしょうか。
よさこい紅白というのは、年末にTwitterのTL上で行ったバーチャルよさこい祭りです。
170チームさんほどご参加していただき、紅組白組に分かれてタイムテーブルにそって、ご自身の演舞動画を投稿していただく。そしてその動画の「いいね!」数を競い合う。という企画です。
1チームより2チームで発信した方が効果がある、では170チームだったらということを考えると、効果は絶大だったように思います。
2019年、かんしゃらが広報でチャレンジしていきたいこと。
——2019年、広報に関してかんしゃらが挑戦しようとしていることがあればぜひお教えください、ネタバレできる範囲で…!
みなと:最近Instagramを見ているとお祭り中のオフショットムービーがストーリーで紹介されているのを良く見かけます。それが面白いなと思っていまして。
ですがストーリーでは残らないので、しっかり編集した上、YouTubeにアップして再生リストにまとめて公開したいと考えています。
特に高知の期間中の様子は高知DVDでしか公開していなかったので、「いつでもどこでも見れる」というメリットもあります。ぜひ来年はそれをやってみたいなと考えていますね。
——お祭りのオフショットとても良いですね!ぜひかんしゃらのオフショットムービーも来年は楽しみにしています。
では、みなとさんは「これからのかんしゃら」をどのようにしていきたいと考えていますか?
みなと:広報という点で言うなれば、よさこいの文化発信や高知県の発信に、力添えしたいと考えています。
県外勢の立場での発信になってしまいますが、よさこい関連で一番フォロワー数が多いTwitterアカウントとしてやっていこうかと。
副代表が高知県によさこい移住したこともありますので、高知ライフや高知のよさこい祭りなんかの記事を書く予定です。
かんしゃら 年末特別企画
「副代表、高知行くってよ。」一体どれだけのよさこいやーが羨ましいと思うのか。
県外勢として、よさこいに関わる究極の形、「よさこい移住」
かんしゃら副代表が移住します。
まさに今、その直前。
少し掘り下げてみます。
とりあえず第1弾。https://t.co/CRPWOLIArh— かんしゃら (@kanshara_voice) December 13, 2018
かんしゃら以外の記事を書くことはやったことがないので、自分にとってはチャレンジです。
夢源風人さんのブログとかは文章が上手く、内容も面白いので負けてられないな!という思いです。
——ありがとうございます!最後に、広報に力を入れて一番「よかった」と思えることがあれば、ぜひお教えください。
みなと:颯戯さんの中の人との親交というのは私自身の広報のみならずよさこいとの関わり合いがガラリと変わったターニングポイントの1つでした。
その後も日本各地のチームさんと交流があり、いろんなアドバイスやご協力を得てここまでなんとかやってこれました。
それも向こうの方が事前にかんしゃらを知っていただいていたことがキッカケで最初にお声がけいただけたことが多かった。
非常に「よかった」と思えるところですね。
——後編へ続く。
【かんしゃら】よさこいイベントが新たな「繋がり」を生む。|参加型イベント「よさこい紅白」開催の裏側と、広報に込める想い。
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